すっかりご無沙汰してしまい、10月ももうあと1週間ですが・・・今月のカレンダーの「チョウセンイタチ」をご紹介します。
(右側が光っているのは照明の反射です)
対馬に生息する在来の食肉目の動物は、ツシマヤマネコとツシマテン、そしてチョウセンイタチの3種です。
ツシマヤマネコとツシマテンは、文化財保護法で国の天然記念物に指定されていますが、チョウセンイタチは指定されていません。
しかし、環境省のレッドリストでは、準絶滅危惧種(NT)「存続基盤が脆弱な種」になっています。
チョウセンイタチ(学名:
Mustela sibirica coreana)は、世界的にみるとかなり広く分布しており、「タイリクイタチ」や「シベリアイタチ」とも呼ばれる事があるようですが(和名をシベリアイタチとした方がよいという人もいるようです)、日本での自然分布は対馬だけです。
対馬(島)という限られたにいるため、準絶滅危惧種になっているのだと思います。
ただし、「自然分布は」と書いたのは、本州西部や四国・九州やその周辺の島に、大陸から移入した(させられた?)らしいチョウセンイタチいるからです。
そして、そういった地域には在来種のイタチ(
Mustela itatsi )がいて、近年は外来種であるチョウセンイタチが優勢になったせいで山間部に追いやられているのだそうです(阿部ら、2005「日本の哺乳類 改定版」)。
しかも、一見しただけでは区別がつかないそうで(チョウセンイタチの方が大きいようですが)、正確な分布が把握できなくなっているそうです。
このため、チョウセンイタチ=外来種 と勘違いしている人もいるようです。
・国立環境研究所 侵入生物データベース:チョウセンイタチ
http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10180.html
対馬ではほぼ全域に生息しているのではないかと思いますが、どちらかというと南の方に多いような気がします(多分きちんとした調査はないのではと思います)。
特に、上県町などでは、ヤマネコやテンよりも見る機会は少ないのではないでしょうか。
沢をよく利用しているようなので、目につきにくいのかもしれません。
本州などだと、イタチはずる賢く、テンは臆病で目につきにくいというイメージがあるようです。
対馬だと逆ですよね。
チョウセンイタチはツシマテンと同じような体色をしていますが、ツシマテン(体重1kgちょっと)よりも小さく、さらにメスの体重(約400g)はオスの半分程度で、鼻の周りが白いのが特徴です。
ツシマテンはぴょこぴょこ走る感じですが、チョウセンイタチはシュルシュルっと走っていくような感じです(わかるでしょうか?)。
ツシマヤマネコは完全な肉食ですが、ツシマテンは果実をよく利用しています。
チョウセンイタチも果実を利用するようですが、昆虫やムカデなど、肉食の割合が高いようです。
生態系の上位にいる食肉目3種が島に生息しているというのは、結構珍しい事のようです。
対馬にはそれだけの種を維持できる豊かな環境が、高い生物多様性があるという事なのだと思います。
3種を一緒に調査できればもっとよくわかるのでしょう。
また、ツシマテンやチョウセンイタチを調べることで、ツシマヤマネコを増やしていくための方法も見つかるのかもしれません。
もっとチョウセンイタチにも興味をもってもらえたらいいなぁと思います。